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気になる眼の病気と症状 13
心因性視力障害
心理的あるいは精神的ストレスが原因で視力が障害される状態をいいます。
Q 心因性視力障害についてくわしく教えてください。
A この病気は、心理的あるいは精神的ストレスが原因で視力が低下し、普通の近視や遠視、乱視と違って、レンズを用いた屈折検査を行っても視力が向上しません。主に両眼にみられ眼科的に角膜や水晶体、網膜その他全般の観察を行っても異常を認めないのが特徴です。
Q どのような方にも起こる病気ですか。
A 大人の方に起こることはまずありません。10歳前後のお子様にみられ、女児の方が男児の2〜4倍多いとされています。慶応大学病院での累計を図にしましたので参考にしてください。
Q では、どのようなことが原因で起こるのですか。
A 眼心身症の1つで、種々の症状を呈してきます。眼精疲労、頭痛、腰痛、吐き気、嘔吐、下痢、発熱などの症状を呈しているものもあり、お子様の視力低下の診察には、一般的に視力低下だけでなく、表情などの観察も必要になってきます。環境要因は、いろいろなことがあげられています。
両親の離婚、長期出張や単身赴任などで片方の親を欠くもの。また、共働きで子供をかまってやれない家庭環境。お姉ちゃん、お兄ちゃんだから下の子の面倒をみるのが当然といわれることによる妹や弟に対する嫉妬などもあります。さらに友達とのトラブル、担任教師との人間関係、いじめなどのケースも見受けられます。一言でいうのは難しいのですが、本人たちはかまってもらえない、もっと自分に注目して欲しいといった一種の愛情枯渇状態が要因のようです。視力低下を一概にテレビの見すぎだ、漫画の読みすぎだと済ますのではなく本人と話しをする時間を持ってあげることも重要なことだと思います。
Q どのような症状で来院されますか。
A もちろん視力低下ですが、本人はあまり自覚がありません。学校検診で視力低下を指摘され眼科を受診することがほとんどです。
Q どのようなことから、この病気ではと疑うのですか。
A 先ほどもお話ししましたように、視力低下以外に一般的は眼科検査では異常を認めません。視力検査において視力向上ができなかったり、視力測定にバラツキがでたりする場合に検査員は打ち消し法というトリックをもちいます。どのような方法かといいますと、裸眼視力で0.1くらいしかでないお子様に何度か視力検査をするうちに、例えば-0.5ディオプターのレンズと+0.5ディオプターのレンズを合わせて視力を測定します。つまり-0.5と+0.5ですから裸眼で測定するのと同じです。
すると0.1しかなかった視力が1.0まで向上します。不思議な心理状態です。
Q 視力検査だけで診断するのですか。
A もちろん、それだけではありません。この病気にかかせない検査に視野検査があります。正常では70度前後ある視野が図で示すような異常視野を示します。らせん状視野や求心性視野狭窄といったものです。
Q それでは生活上、たいへん困りますね。
A 視力低下の割には行動がスムーズで、学校や家庭での生活で不自由なことはないというのも特徴です。ただ、テレビなどは前に行かないと見にくいと訴えるようです。その時に「あまり前で見ると眼が悪くなるよ」といった否定的な言葉を言わないことも重要です。
Q 具体的にどのようなことを訴えますか。
A たとえば、算数の時間になると黒板の字が見えないとか、ピアノのレッスンの時だけ楽譜が見えないとか言います。1週間のうち多くの習い事をしているお子様もいます。「大変だね」と言うと、ちょっと困った顔をしながら、親の前では「大丈夫」と答えるお子様もいます。わずかなストレスでも起こりうるといわれ、たとえば友人の指が目に触れたとか、振り向いたときに下敷きの角が瞼に触れたなど軽微なことがきっかけになることもあるといわれています。
Q このような病気には、どのように対処されていますか。
A 心理療法というか、この病気をご両親に十分に理解していただくことからはじめます。それには、患者様との信頼関係が大切で、こちらも一方的にならないように気をつけます。まず、この病気は悪いものではないことをしっかり伝え、お子様には別の検査があるからと言って親と別々にします。おばあさん、おじいさんと来院される方もいますが、最終的には必ず親に来ていただきます。この病気について詳しく説明すると、「やはりそうですか。思い当たることがあります」と気づいてくれるケースも多くみられます。この病気を持つお子様の母親に人格検査を行ったデータによりますと、患者と同じ一定の性格傾向が半数以上に認められ、子供自身の問題の他にむしろ親子関係とか母親の養育態度に大きな要因があるケースが少なくないといわれています。ですから、通院そのものが母子のコミニュケーションの場を提供することで良い結果をもたらす場合もあります。
Q 治療としてはどうですか。
A 視力低下は一時的なもので必ず良くなることを説明し、ご両親にお子様のストレスを理解して、そのストレスの要因がわかるものであれば取り除くようにお話しします。中には病院に来ることで母親と二人だけで外出できることが大変に嬉しそうなお子様もみうけられますので、そのことを大切にしてあげます。『抱っこ点眼療法』といって、親子関係が心因だと判断した場合は、偽薬(生理的食塩水の点眼薬)を使って、1日1〜2回お子様を仰向けにしてお母さんの膝の上に頭を乗せ「この病気はそのうち治るから安心しな」と言葉をかけて点眼させます。この方法が効果を生みだすこともありますので、この病気に限らず親子のコミュニケーションがとれていないと感じた方はぜひやってみてください。また、中にはメガネをかけたいという願望から視力低下をきたすお子様もありますので、その場合は、素通しのメガネを処方し子供の決めたデザインのメガネを選ばせることもあります。もちろん予算に応じてですが。
Q 最後に予後はどうでしょうか。
A 前にも話しましたように、ほとんどの方が何ごともなかったように視力は改善します。中には長期化する方もいます。その時には精神科などの専門医での心理療法が必要になることもあります。
とにかく、お子様の愛情枯渇状態を家族皆で理解してあげることが最善の方法ですね。
古川中央眼科
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