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気になる眼の病気と症状

糖尿病網膜症

糖尿病が眼の病気を引き起こすということは、だんだんと知られるようになってきましたが、それでも年間3000人もの糖尿病患者が失明しています。糖尿病による網膜症は、成人の中途失明の第一の原因なのです。糖尿病と眼の健康についてまとめました。

気になる眼の病気と症状

糖尿病網膜症

糖尿病が眼の病気を引き起こすということは、だんだんと知られるようになってきましたが、それでも年間3000人もの糖尿病患者が失明しています。糖尿病による網膜症は、成人の中途失明の第一の原因なのです。糖尿病と眼の健康についてまとめました。

最初に糖尿病とはどんな病気なのでしょうか。

糖尿病は血液中の糖が過剰になった状態(高血糖)が続くことで、全身の血管が冒される慢性の病気です。全身のあらゆる部分に合併症が起こりやすく、とくに目の網膜症、神経障害、腎症は3大合併症として知られています。ご飯やパンなどの炭水化物やお菓子のような糖質は、小腸でブドウ糖になり、肝臓を経て、血液中に放出され、エネルギー源として使われます。体内の糖は肝臓から出るインスリンというホルモンがコントロールしているのですが、このインスリンの分泌量が少ない、分泌のタイミングが遅い、筋肉などでの効きが悪いといった理由で高血糖になり、それが糖尿病を引き起こすのです。

糖尿病は完治することはありませんが、食事や運動などの生活上の注意を守り、薬物療法を続けていれば、コントロールすることができます。ただ、残念ながら、そのコントロールがうまく行かない患者さんが多く、最悪の場合、網膜症によって失明したり、腎症によって人工透析になったり、神経障害によって足を切断したりすることがあるのです。

あるデータでは糖尿病網膜症の患者さんの20%が内科医から眼科受診を勧められたことがなく、44%が視力が落ちてきた、見えなくなったなど自覚症状が出てから眼科を受診したという報告が出ていますが、このように受診が遅れる傾向は残念ですね。

どのくらいの患者さんがいるのでしょう。

平成14年度に行われた糖尿病患者調査結果の速報分では、ヘモグロビンA1c(血糖値の推移を見る検査値)6.1%以上、または、アンケート調査で、現在糖尿病の治療を受けていると答えた「糖尿病が強く疑われる人」は約740万人、ヘモグロビンA1cが5.6%以上6.1%未満で現在糖尿病の治療を受けていない「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わせると約1620万人でした。50代の男性2150人のうち糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性を否定できない人の割合はそれぞれ14%、10.7%と約4人に1人が糖尿病の可能性があるという結果になりました。日本人は遺伝的に糖尿病になりやすい民族で、高エネルギー高脂肪の食事や運動不足といったライフスタイルが発症を増やしていると考えられます。

糖尿病の人の眼にはどのようなことが起きているのでしょうか。

糖尿病の影響を受けやすいのは網膜で、とくに光に対する感度が高い網膜の中心部の黄斑が冒されることが危険なのです。網膜の小さな血管がつまりやすくなることで視力が落ちたり視野が欠けたりし、放っておくと、やがては失明してしまいます。これが糖尿病網膜症です。

その他にも、白内障、角膜障害、虹彩炎、眼球の運動障害、視神経症なども起こりやすくなります。

糖尿病の患者さんのうち、どのくらいの割合の人が網膜症になるのでしょうか。

糖尿病は治らないため、患者さんはだれでもいつかは糖尿病網膜症になる危険性があります。糖尿病の状態が悪い人、血糖が高いとかヘモグロビンA1cが高い人などは短い期間で網膜症になりますし、糖尿病のコントロールが比較的よくできている人でも長生きすれば網膜症になるのです。糖尿病になって10年経った人は50%、20年以上では75%、4人のうち3人までが網膜症になっています。なお、糖尿病の前段階の境界型糖尿病の人でも0.1%に発症すると言われています。

糖尿病患者が網膜症にできるだけならないようにするためには どうすればいいのでしょう。

糖尿病と診断されたら、何よりもまず薬や食事、運動などで血糖コントロールをきちんとすることです。そして、眼科で定期的に眼底の検査を受けることです。自覚症状が出てからでは遅すぎます。網膜症が進んでから治療を始めてもその状態を維持することもできず、進行を止められない場合が多いのです。糖尿病網膜症で失明する人は年間3000人とも4000人とも言われますが、そのほとんどが眼科に来た時には手遅れだった人です。定期的な検査で早期発見し、必要な時期に治療をすれば失明するのを防げます。

眼底検査は眼に光を当てて、眼の奥を検眼鏡という道具を使って観察します。眼底検査では、網膜だけでなく、網膜を取り巻く血管や網膜から脳へつながる視神経の入り口である視神経乳頭を直接観察することができるのです。体内の血管や神経を直接見ることができるのは眼からだけです。眼底検査によってほんの小さな眼底出血が観察され、糖尿病や動脈硬化が発見されることもあります。

瞳を大きくあけて、精密に眼底を観察するために瞳孔を開く目薬(散瞳薬)を使います。散瞳薬を使うと、5~6時間はピントが合わなくなり、明るいところではまぶしく感じますから、眼科からの帰途は、車の運転はできませんし、気を付けて歩いていただきたいですね。

螢光眼底撮影と言う検査を行うことがありますが、これは網膜の血管を鮮明に写し、異常がないかを観るために、散瞳薬で瞳孔を開き、造影剤を静脈注射した後、眼底写真を撮影する検査です。網膜で血液が足りなくなっている部分や血管のもろさなどが分かります。人間ドックなどでも眼底撮影が行われますが、こちらは散瞳薬や造影剤は使用しません。

なお、すでに硝子体出血が起きていて、本来透明であるはずの硝子体が濁っていると、眼底が見えないため、眼底検査ができません。その場合には超音波検査を行います。

 

糖尿病の2つのタイプとその原因

糖尿病には大きく分けると2つのタイプがあります。膵臓からインスリンが全く分泌されない1型糖尿病(体外からのインスリン注射が欠かせないので、インスリン依存型糖尿病ともいう)と、膵臓からのインスリン分泌能力がある程度は残っている2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)です。 大人の糖尿病患者の95%はインスリン非依存型で、インスリンは作られていますが、分泌のタイミングが遅い、筋肉など糖を取り込む組織での効きが悪い、というのが高血糖になる理由です。インスリンの働きが悪くなると、膵臓は量でカバーしようとより多くのインスリンを分泌し続けて消耗し、やがてインスリンの分泌も低下します。また、一旦高血糖になると、インスリンの分泌や働きが鈍ることも分かっています。 インスリン依存型よりも遺伝的な要素が強く、食べすぎや運動不足、強いストレスが発病になるきっかけとなると考えられています。また、肥満と関係するのも特徴で、皮下脂肪に比べて内臓の周りに脂肪がついて上半身が太りやすい内臓肥満では、糖尿病になりやすいのです。

糖尿病網膜症の進行のしかたについて教えてください。

糖尿病網膜症は、「単純糖尿病網膜症」(「非増殖網膜症」)から「増殖前網膜症」、「増殖網膜症」と進行します。単純糖尿病網膜症では、眼底検査で、小さな出血や毛細血管のこぶや詰まり、むくみ、脂肪の沈着などが見られます。この段階では自覚症状は出ませんが、まれに網膜の中心部である黄斑にむくみや出血が起こると、視力が低下することがあります(糖尿病黄斑症)。

増殖前網膜症では、毛細血管の閉塞、静脈の腫れ、網膜浮腫が起こります。まだこの段階でも自覚症状はありませんが、やはり黄斑の部分に異常が起こると視力が低下します。

網膜から硝子体に向かって新生血管が伸び始めたら、増殖網膜症に移行した証拠です。網膜で毛細血管が詰まったことによる栄養や酸素の不足を解消するために、新生血管が新しいバイパスとなるのですが、この血管はもろいために出血しやすく、硝子体出血を起こすのです。また、網膜にむくみが出たり、出血の後には異常な膜が増殖し、この組織が眼球の壁から網膜を引き剥がすように引っ張るために網膜剥離が起こりやすくなります。

程度が進むと、物がゆがむ、ぼやける、虫が飛んでいるように見える、視野が欠けている、目の前が真っ赤になったという自覚症状が出ることもありますが、それまでは全く気付きません。自覚症状が出たときにはすでに手遅れというケースも多いのです。なお、治療を続けるうちに進行が止まった場合には、「増殖停止網膜症」として区別する場合もあります。ただ、また進行し始めることもあり、もちろん血糖のコントロールを継続し、2~6ヶ月ごとに眼科で検査を受けなければなりません。

 

どのような治療を行うのでしょうか。

いずれも血糖コントロールをきちんと行うというのが最低の条件です。(下記コラム参照)。単純糖尿病網膜症で起こる出血やこぶ、白斑は、糖尿病そのもののコントロールをよくすると自然に消えることもあるので、眼科的な治療は行われず、何よりも血糖の管理が重要です。出血を抑える内服薬などを用いて、眼の状態を改善させる場合もあります。

増殖前網膜症では血管の詰まった部分や浮瞳に対して光凝固治療を行い、増殖網膜症では、新生血管や硝子体出血、網膜剥離の治療として、光凝固治療や硝子体手術を行います。

光凝固治療は網膜の病変部をレーザー光により凝固するものです。視力に大切な網膜の中心部を除き、広範囲に凝固することが多く、部分的に新生血管やむくみを凝固する場合もあります。レーザー光は直径0.2~0.5mmと、まさにピンポイントで病変部分に当てることができるため、多いときには数百カ所照射することもあるくらいです。照射時間は0.1~0.5秒が平均的で、フラッシュがたかれたような感じです。照射している最中には、まぶしさや軽い痛みを感じることもありますが、治療時間は20~30分程度です。通常入院の必要はなく、点眼麻酔で行います。1回で終わることはなく、当院では片目について2回を2週間間隔で行っています。

ただし、光凝固治療の目的は病気の進行を止めることで、網膜の一部を壊してしまうため、視力が上がることは期待できません。糖尿病網膜症は病変の範囲がだんだん広くなるため、5年後、10年後もある程度の視力を保つには先回りをして、今はまだ悪くない部部も壊してしまわなければならないのです。光凝固治療の後、いったん低下した視力が回復することもありますが、最終的には治療前と同じに戻らない場合もあります。

すでに増殖膜があり、網膜剥離が起きた場合には硝子体手術が行われます。硝子体内の出血を取り除き、異常に増殖した部分を切除したりします。網膜剥離では削がれた網膜を元の位置に戻し、レーザーによる光凝固で出血や剥離を防ぎます。硝子体を取り除いた場合には、人工の液体に入れ替えて、内部を透明にします。

糖尿病の治療

糖尿病の治療のベースとなるのは、血糖のコントロールです。

血糖をうまくコントロールするポイントは以下のようなものです。

  • 主治医や管理栄養士に相談して、バランスのよい食事をする。
  • 主治医や運動の専門家に指導を受け、運動を続ける。
  • 禁煙する。
  • アルコールはやめるか控えめにする。
  • 睡眠不足やストレスを避ける。

 

このような生活上の注意をしていると、糖尿病の引き金となる肥満も防げます。

さらに、症状に応じて薬物療法を行います。薬物療法に使われる薬は、

  • インスリン注射
  • インスリンの分泌を促進する飲み薬(スルホニル尿素薬、即効性インスリン分泌促進薬)
  • 血糖上昇を抑える飲み薬(α-グルコシターゼ阻害薬)
  • 血糖を下げる飲み薬(ビグアナイト薬)
  • インスリンの効きをよくする薬(インスリン抵抗性改善薬)

があります。

 

定期的に内科や眼科の診察を受けることも欠かせません。

最初に糖尿病とはどんな病気なのでしょうか。

糖尿病は血液中の糖が過剰になった状態(高血糖)が続くことで、全身の血管が冒される慢性の病気です。全身のあらゆる部分に合併症が起こりやすく、とくに目の網膜症、神経障害、腎症は3大合併症として知られています。ご飯やパンなどの炭水化物やお菓子のような糖質は、小腸でブドウ糖になり、肝臓を経て、血液中に放出され、エネルギー源として使われます。体内の糖は肝臓から出るインスリンというホルモンがコントロールしているのですが、このインスリンの分泌量が少ない、分泌のタイミングが遅い、筋肉などでの効きが悪いといった理由で高血糖になり、それが糖尿病を引き起こすのです。

糖尿病は完治することはありませんが、食事や運動などの生活上の注意を守り、薬物療法を続けていれば、コントロールすることができます。ただ、残念ながら、そのコントロールがうまく行かない患者さんが多く、最悪の場合、網膜症によって失明したり、腎症によって人工透析になったり、神経障害によって足を切断したりすることがあるのです。

あるデータでは糖尿病網膜症の患者さんの20%が内科医から眼科受診を勧められたことがなく、44%が視力が落ちてきた、見えなくなったなど自覚症状が出てから眼科を受診したという報告が出ていますが、このように受診が遅れる傾向は残念ですね。

どのくらいの患者さんがいるのでしょう。

平成14年度に行われた糖尿病患者調査結果の速報分では、ヘモグロビンA1c(血糖値の推移を見る検査値)6.1%以上、または、アンケート調査で、現在糖尿病の治療を受けていると答えた「糖尿病が強く疑われる人」は約740万人、ヘモグロビンA1cが5.6%以上6.1%未満で現在糖尿病の治療を受けていない「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わせると約1620万人でした。50代の男性2150人のうち糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性を否定できない人の割合はそれぞれ14%、10.7%と約4人に1人が糖尿病の可能性があるという結果になりました。日本人は遺伝的に糖尿病になりやすい民族で、高エネルギー高脂肪の食事や運動不足といったライフスタイルが発症を増やしていると考えられます。

糖尿病の人の眼にはどのようなことが起きているのでしょうか。

糖尿病の影響を受けやすいのは網膜で、とくに光に対する感度が高い網膜の中心部の黄斑が冒されることが危険なのです。網膜の小さな血管がつまりやすくなることで視力が落ちたり視野が欠けたりし、放っておくと、やがては失明してしまいます。これが糖尿病網膜症です。

その他にも、白内障、角膜障害、虹彩炎、眼球の運動障害、視神経症なども起こりやすくなります。

糖尿病の患者さんのうち、どのくらいの割合の人が網膜症になるのでしょうか。

糖尿病は治らないため、患者さんはだれでもいつかは糖尿病網膜症になる危険性があります。糖尿病の状態が悪い人、血糖が高いとかヘモグロビンA1cが高い人などは短い期間で網膜症になりますし、糖尿病のコントロールが比較的よくできている人でも長生きすれば網膜症になるのです。糖尿病になって10年経った人は50%、20年以上では75%、4人のうち3人までが網膜症になっています。なお、糖尿病の前段階の境界型糖尿病の人でも0.1%に発症すると言われています。

糖尿病患者が網膜症にできるだけならないようにするためには どうすればいいのでしょう。

糖尿病と診断されたら、何よりもまず薬や食事、運動などで血糖コントロールをきちんとすることです。そして、眼科で定期的に眼底の検査を受けることです。自覚症状が出てからでは遅すぎます。網膜症が進んでから治療を始めてもその状態を維持することもできず、進行を止められない場合が多いのです。糖尿病網膜症で失明する人は年間3000人とも4000人とも言われますが、そのほとんどが眼科に来た時には手遅れだった人です。定期的な検査で早期発見し、必要な時期に治療をすれば失明するのを防げます。

眼底検査は眼に光を当てて、眼の奥を検眼鏡という道具を使って観察します。眼底検査では、網膜だけでなく、網膜を取り巻く血管や網膜から脳へつながる視神経の入り口である視神経乳頭を直接観察することができるのです。体内の血管や神経を直接見ることができるのは眼からだけです。眼底検査によってほんの小さな眼底出血が観察され、糖尿病や動脈硬化が発見されることもあります。

瞳を大きくあけて、精密に眼底を観察するために瞳孔を開く目薬(散瞳薬)を使います。散瞳薬を使うと、5~6時間はピントが合わなくなり、明るいところではまぶしく感じますから、眼科からの帰途は、車の運転はできませんし、気を付けて歩いていただきたいですね。

螢光眼底撮影と言う検査を行うことがありますが、これは網膜の血管を鮮明に写し、異常がないかを観るために、散瞳薬で瞳孔を開き、造影剤を静脈注射した後、眼底写真を撮影する検査です。網膜で血液が足りなくなっている部分や血管のもろさなどが分かります。人間ドックなどでも眼底撮影が行われますが、こちらは散瞳薬や造影剤は使用しません。

なお、すでに硝子体出血が起きていて、本来透明であるはずの硝子体が濁っていると、眼底が見えないため、眼底検査ができません。その場合には超音波検査を行います。

 

糖尿病の2つのタイプとその原因

糖尿病には大きく分けると2つのタイプがあります。膵臓からインスリンが全く分泌されない1型糖尿病(体外からのインスリン注射が欠かせないので、インスリン依存型糖尿病ともいう)と、膵臓からのインスリン分泌能力がある程度は残っている2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)です。 大人の糖尿病患者の95%はインスリン非依存型で、インスリンは作られていますが、分泌のタイミングが遅い、筋肉など糖を取り込む組織での効きが悪い、というのが高血糖になる理由です。インスリンの働きが悪くなると、膵臓は量でカバーしようとより多くのインスリンを分泌し続けて消耗し、やがてインスリンの分泌も低下します。また、一旦高血糖になると、インスリンの分泌や働きが鈍ることも分かっています。 インスリン依存型よりも遺伝的な要素が強く、食べすぎや運動不足、強いストレスが発病になるきっかけとなると考えられています。また、肥満と関係するのも特徴で、皮下脂肪に比べて内臓の周りに脂肪がついて上半身が太りやすい内臓肥満では、糖尿病になりやすいのです。

糖尿病網膜症の進行のしかたについて教えてください。

糖尿病網膜症は、「単純糖尿病網膜症」(「非増殖網膜症」)から「増殖前網膜症」、「増殖網膜症」と進行します。単純糖尿病網膜症では、眼底検査で、小さな出血や毛細血管のこぶや詰まり、むくみ、脂肪の沈着などが見られます。この段階では自覚症状は出ませんが、まれに網膜の中心部である黄斑にむくみや出血が起こると、視力が低下することがあります(糖尿病黄斑症)。

増殖前網膜症では、毛細血管の閉塞、静脈の腫れ、網膜浮腫が起こります。まだこの段階でも自覚症状はありませんが、やはり黄斑の部分に異常が起こると視力が低下します。

網膜から硝子体に向かって新生血管が伸び始めたら、増殖網膜症に移行した証拠です。網膜で毛細血管が詰まったことによる栄養や酸素の不足を解消するために、新生血管が新しいバイパスとなるのですが、この血管はもろいために出血しやすく、硝子体出血を起こすのです。また、網膜にむくみが出たり、出血の後には異常な膜が増殖し、この組織が眼球の壁から網膜を引き剥がすように引っ張るために網膜剥離が起こりやすくなります。

程度が進むと、物がゆがむ、ぼやける、虫が飛んでいるように見える、視野が欠けている、目の前が真っ赤になったという自覚症状が出ることもありますが、それまでは全く気付きません。自覚症状が出たときにはすでに手遅れというケースも多いのです。なお、治療を続けるうちに進行が止まった場合には、「増殖停止網膜症」として区別する場合もあります。ただ、また進行し始めることもあり、もちろん血糖のコントロールを継続し、2~6ヶ月ごとに眼科で検査を受けなければなりません。

 

どのような治療を行うのでしょうか。

いずれも血糖コントロールをきちんと行うというのが最低の条件です。(下記コラム参照)。単純糖尿病網膜症で起こる出血やこぶ、白斑は、糖尿病そのもののコントロールをよくすると自然に消えることもあるので、眼科的な治療は行われず、何よりも血糖の管理が重要です。出血を抑える内服薬などを用いて、眼の状態を改善させる場合もあります。

増殖前網膜症では血管の詰まった部分や浮瞳に対して光凝固治療を行い、増殖網膜症では、新生血管や硝子体出血、網膜剥離の治療として、光凝固治療や硝子体手術を行います。

光凝固治療は網膜の病変部をレーザー光により凝固するものです。視力に大切な網膜の中心部を除き、広範囲に凝固することが多く、部分的に新生血管やむくみを凝固する場合もあります。レーザー光は直径0.2~0.5mmと、まさにピンポイントで病変部分に当てることができるため、多いときには数百カ所照射することもあるくらいです。照射時間は0.1~0.5秒が平均的で、フラッシュがたかれたような感じです。照射している最中には、まぶしさや軽い痛みを感じることもありますが、治療時間は20~30分程度です。通常入院の必要はなく、点眼麻酔で行います。1回で終わることはなく、当院では片目について2回を2週間間隔で行っています。

ただし、光凝固治療の目的は病気の進行を止めることで、網膜の一部を壊してしまうため、視力が上がることは期待できません。糖尿病網膜症は病変の範囲がだんだん広くなるため、5年後、10年後もある程度の視力を保つには先回りをして、今はまだ悪くない部部も壊してしまわなければならないのです。光凝固治療の後、いったん低下した視力が回復することもありますが、最終的には治療前と同じに戻らない場合もあります。

すでに増殖膜があり、網膜剥離が起きた場合には硝子体手術が行われます。硝子体内の出血を取り除き、異常に増殖した部分を切除したりします。網膜剥離では削がれた網膜を元の位置に戻し、レーザーによる光凝固で出血や剥離を防ぎます。硝子体を取り除いた場合には、人工の液体に入れ替えて、内部を透明にします。

糖尿病の治療

糖尿病の治療のベースとなるのは、血糖のコントロールです。

血糖をうまくコントロールするポイントは以下のようなものです。

  • 主治医や管理栄養士に相談して、バランスのよい食事をする。
  • 主治医や運動の専門家に指導を受け、運動を続ける。
  • 禁煙する。
  • アルコールはやめるか控えめにする。
  • 睡眠不足やストレスを避ける。

 

このような生活上の注意をしていると、糖尿病の引き金となる肥満も防げます。

さらに、症状に応じて薬物療法を行います。薬物療法に使われる薬は、

  • インスリン注射
  • インスリンの分泌を促進する飲み薬(スルホニル尿素薬、即効性インスリン分泌促進薬)
  • 血糖上昇を抑える飲み薬(α-グルコシターゼ阻害薬)
  • 血糖を下げる飲み薬(ビグアナイト薬)
  • インスリンの効きをよくする薬(インスリン抵抗性改善薬)

があります。

 

定期的に内科や眼科の診察を受けることも欠かせません。

       
     
           

古川中央眼科      

     

〒989-6163
宮城県大崎市古川台町4-36

     

TEL:0229-22-6111

     

コンタクト室:

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月曜〜土曜:


午前 8:15~12:00
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木曜・日曜・祝日

     
     
       
         
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